約2月かかった一連の無登録農薬騒動は、十月二十六日の青森りんごの安全宣言で一区切りがついた。重苦しい産地のムードが続いていた状況の中で、この宣言は正直言って全生産者をはじめとする関係機関の誰しもが少しばかりの安堵感をもったに違いない。
これに至っては無登録農薬を使用した生産者の非は率直に認めなければならないし、消費者なくしてりんご生産は成り立たないことも痛感したものと思われる。「安全でしかも安心して食べていただく」、これは生産する者にとっての原点であり当たり前のことである。決して他人事ではなく一人ひとりがその責務の重さをしっかり受け止め、次年度以降の生産に心機一転して臨みたい。
それにしても今回支払った本県りんご生産者の代償は大きかった。無登録農薬の散布園やそれに伴う隣接園などを含めると、およそ七十六ヘクタールほどの園地が廃棄対象園となり、約千八百三十トン余りのりんごが焼却処分されている。
県産りんごの生産量からすれば、ほんの一%にも満たない数量とはいえ、直接かかわった当事者の苦しみや様々なケースで及ぼした影響は計り知れないほどのものがあった。
これを契機に国では農薬取締法の改正案が国会で議論されているが、内容は非常に不透明である。全国的に問題となった無登録農薬問題だけに、もっと各県の生産者から改正に向けた現実の意見を国は吸い上げるべきである。ただ罰則や規制強化に終始し、生産者いじめをするだけの法改正では問題は決して解決しないだろう。
改正にあたっては、海外から持ち込まれる農薬や化学物質の水際対策はもちん登録失効農薬の速やかな公表とその情報伝達、さらに回収という一連の対策、そして、国をはじめとする行政の指導体制の強化が生産現場では極めて重要である。回収費用など使用する農薬の販売価格にスライドするような風潮も是正しなければならない。また、登録農薬の適用作物の拡大も必要不可欠であろう.支払った生産者の代償がこうした声として反映され、分かりやすい新農薬取締法でなければ意味がない。